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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)40号 判決 1950年6月15日

被告人

佐川昌己

外一名

主文

被告人両名に対する原判決は、孰れも、これを破棄する。

本件を津地方裁判所四日市支部に差戻す。

理由

被告人佐川昌己の弁護人浦酉太郞の控訴趣意第一点の要旨は、原判決は、刑事訴訟法第三百三十九条第一項第二号の規定に違反した違法がある。即ち原審第四回公判調書によれば、検察官は、昭和二十四年九月二日附起訴状の公訴事実中、被告人佐川に対する第二の34第三の2は撤回すると述べていて、右は訴因の撤回でなく、公訴の取消と認むべきであつて、公訴の取消があつたときは、決定を以て、公訴を棄却すべきであるのに、原審は、何等この手続を執つていないと謂うにあるによつて原審第四回公判調書の記載を見るに、検察官は、裁判官の許可を得て、被告人佐川に対する昭和二十四年九月二日附起訴状記載の公訴事実中、第二の3第二の4第三の2を撤回したことは、所論の通りで、右公訴事実の撤回は、刑事訴訟法第二百五十七条の公訴の取消に該当し、公訴の取消は、刑事訴訟規則第百六十八条により、理由を記載した書面でこれをしなければならないものであるにも拘らず、これを為していない違法があり、更に公訴の取消があつたときは、刑事訴訟法第三百三十九条第二号により、決定を以て、公訴を棄却しなければならないのに、原審は、これを忘却して放置した違法がある。よつて原審は、須らくこの手続を履践すべきもので、この点についての控訴趣意は、理由がある。

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